一度きりの子猫の話 [cats]
1971年秋、萩尾望都はキャベツ畑で1匹の子猫を拾う。まだ目も開いていなくて、ピーピーと鳴いていた。長屋(大泉サロン)で飼うことになった子猫は「バタ」と命名された。モーさまは「バタ」をモデルに 「毛糸玉にじゃれないで」(1972)という高校受験を控えた女子中学生の話を描いたが、小中学校は戦後のベビーブームで産まれた子供たちで溢れていた。《大量の生徒と大量のテスト。大量に生産されたものに個性はありません》‥‥受験勉強で疲れた中3時代のことを描きながら、「やはり日本を舞台にしたものは辛いなあ」 と思った。厳しかった両親のことを思い出してしまうので家族を描くのも辛かったと述懐している。50年前はネコに対する飼主の意識も低く、知識も乏しかった。キャットフードも一般に普及していなかった。空前のネコブームの今日のように、ネコを家族の一員として迎えて一緒に暮らすということも少なかったのではないか。萩尾望都が牛乳で育て、竹宮惠子が炊きたてのご飯に鰹節を乗せた「ねこまんま」を食べさせていたことは責められない。
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- 著者:萩尾 望都
- 出版社:河出書房新社
- 発売日:2021/04/21
- メディア:単行本
- 目次:前書き / 出会いのこと 1969年~1970年 / 大泉の始まり 1970年10月 / 竹宮惠子先生のこと / 増山さんと「少年愛」/『悲しみの天使(寄宿舎)』/『11月のギムナジウム』/ 1971年〜1972年 ささやななえこさんを訪ねる / 1972年『ポーの一族』/ 海外旅行 1972年9月 / 下井草の話 1972年末~1973年4月末頃 /『小鳥の巣』を描く 1973年2月~3月...
2021-06-05 00:11
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