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アベの壁 [books]

高校時代は安部公房を愛読した。『砂の女』『他人の顔』『燃えつきた地図』は学校の図書室から借りて、『壁』『第四間氷期』などは新潮文庫で読んだ。17歳で単身イタリアに留学した画学生のヤマザキマリはイタリア詩人と同棲中に極度の窮乏生活に陥る。「これを読みなさい。今の君はこういう文学に触れておくべきだ」‥‥「飢餓」 状態の小娘に、フィレンツェの芸術家や文芸人の集まるサロン主宰者の老作家がイタリア語版『砂の女』(1962)を差し出したのだ。一気に安部公房の世界観に引きずり込まれたヤマザキマリは日本の母親に連絡して、安部公房の本を送ってくれるように頼む。小説、評論、エッセイ、戯曲を「寝る間も惜しんで読み漁った」ことで、当時の極貧生活を客観化し、不安定だった精神のバランスを保つことが出来たという。『壁とともに生きる』(NHK出版 2022)は『砂の女』『壁』『飢餓同盟』『けものたちは故郷をめざす』『他人の顔』『方舟さくら丸』を中心に、人間が否応なく直面する「壁」と「自由」について読み解いた私的安部公房論である。ヤマザキマリは『安部公房 砂の女』(Eテレ 100分de名著)に講師として出演している。

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壁とともに生きる: わたしと「安部公房」

壁とともに生きる わたしと「安部公房」

  • 著者:ヤマザキマリ
  • 出版社:NHK出版
  • 発売日:2022/05/10
  • メディア:新書(NHK出版新書 675)
  • 目次:プロローグ/「自由」の壁──『砂の女』/「世間」の壁──『壁』/「革命」の壁──『飢餓同盟』/「生存」の壁──『けものたちは故郷をめざす』/「他人」の壁──『他人の顔』/「国家」の壁──『方舟さくら丸』


安部公房 砂の女

安部公房 砂の女(100分de名著)

  • 著者:ヤマザキマリ
  • 出版社:NHK出版
  • 発売日:2022/05/27
  • メディア:ムック(NHKテキスト)
  • 内容:教養を盾に部落の人間を啓蒙しようとする男の驕りと、生活のため繁殖のために男を引き留めようとする女の業。その対比と、しだいに砂穴での暮らしに順応してゆく男の変化をリアルに、飄々と、ときにアイロニカルなユーモアを交えて描写する人間観察の傑作。画学生時代から安部作品を愛読してきた漫画家のヤマザキマリ氏が、「自由」や「希望」の...


砂の女

砂の女

  • 著者:安部 公房
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2022/05/22
  • メディア: 文庫(新潮文庫)
  • 内容: 砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編

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