カストロの尻 [books]
金井美恵子の『カストロの尻』(新潮社 2017)は冒頭と掉尾を飾る2つのエッセイに挟まれた10篇の短篇で構成された連作集。エッセイと小説の文体に差異がないので違和感なく読み通せる。岡上淑子のコラージュを掲げた6篇は「アメリカの写真雑誌──1940年代後半から50年代にかけての──を使用したフォト・コラージュ作品から揺曳された映像が、私の記憶の中の映像や記憶の断片と結びついて書かれた」という。エルンストのようなシュールなコラージなので、プルースト、後藤明生、安岡章太郎、ジェラール・ド・ネルヴァル、宇野浩二、ヴィクトル・ユーゴー、チェーホフ、山田宏一、ロラン・バルト、スタンダールなどをエピグラフや文中に引用した小説も括弧()やダッシュ(──)で継ぎ接ぎされている。金粉ショーの踊子に夢中の狂恋男(衣料問屋の元番頭)が「尼」を「尻」と読み間違えた「カストロの尻」。鴎外と森娘(森茉莉)の仰天エピソードを発見したエッセイ「小さな女の子のいっぱいになった膀胱について」も出色の面白さ。
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- 著者:金井 美恵子
- 出版社:新潮社
- 発売日:2017/05/31
- メディア:単行本
- 目次:「この人を見よ」 あるいは、ボヴァリー夫人も私だ / 破船 / 昇天 / 呼び声、もしくはサンザシ / シテール島への、/ 胡同の素馨 / 廃墟の旋律 / 雷鳴の湾──王女、あるいはMiscellany / 雷鳴の湾──Incident / 「孤独の讃歌」 あるいは、カストロの尻 / カストロの尻──Miscellany / 小さな女の子のいっぱいになった膀胱について / 本を燃やす、/ パナ...
2017-09-02 00:30
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