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奇病ガーデン [books]

川野芽生の初長編小説『奇病庭園』(文藝春秋 2023)は中編「翼に就いて II」の前後に、『月面文字翻刻一例』(書肆侃侃房 2022)に収録されたような掌篇全31篇(前17篇・後14篇)を配した三部構成。角、翼、鉤爪、毛皮、半身、蹄、複眼、蔓、嘴、尾、香り、鰭、脚、真珠、顔、棘、鱗、糸、繭、牙、根、触覚、逆鱗、声など、躰の一部が奇病によって変容・変貌して行く異形の人間たちのメタモルフォーゼである。背中に翼の生えた妊婦が産み落とした赤子は鉤爪を生やした者たちに森で育てられて〈七月の雪より〉に、池に落ちた赤子は文書館から「有角老女頭部」を抱えて逃亡した写字生(文字の読めない「文字無シ魚」として雇われて、腕の血管に金のペン先を突き刺しながら極秘文書を筆写する)に拾われて〈いつしか昼の星の〉となる。掌篇は 「〈金のペン先〉連続殺人事件」 をめぐるミステリ、真ん中に挟まれた少女ミュザイと少年フュルイ、美少年リュガの物語(翼に就いて II)は独立した「前日譚」として読める。

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奇病庭園

奇病庭園

  • 著者:川野 芽生
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2023/08/04
  • メディア:単行本
  • 目次:角に就いて / 翼に就いて / 鉤爪に就いて / 透明鉱 / 毛皮に就いて / 半身に就いて / 蹄に就いて / 複眼に就いて / 蔓に就いて / 金のペン先 / 嘴に就いて / 尾に就いて / 香りに就いて / 鰭に就いて / 脚に就いて / 真珠に就いて / 顔に就いて / 翼に就いてII / 棘に就いて / 鱗に就いて / 記憶に就いて / 糸に就いて / 繭に就いて / 牙に就いて / 半身に就いて...

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