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三厳と満厳 [books]

『柳生十兵衛死す 上下』(河出書房新社 2020)は『柳生忍法帖』(1964)、『魔界転生』(1967)に続く十兵衛三部作の完結篇(1992)。江戸と室町時代、三厳と満厳、2人の十兵衛が250年の時空をタイムスリップして入れ替わるSF時代劇である。物語は慶安2年(1650)から始まる。能楽師・金春竹阿弥は秘曲「世阿弥」を作ろうとしていた。息子の七郎は十兵衛の弟子だったが、上皇・月輪ノ院に見初められて京の御所で舎人となっている。金春七郎が刺客に襲われたことから三厳は幕府転覆を企む謀略に巻き込まれて行く。竹阿弥が「世阿弥」を清水寺の舞台で演じている最中に、三厳は応永14年(1407)へタイムスリ ップしてしまう。2人は先祖の世阿弥と柳生満厳に変身して、足利義満と後小松法皇の陰謀に立ち向かう。相国寺で薪能「船橋」を演じた世阿弥と柳生十兵衛満厳も落雷で炎上する七重塔から江戸時代へタイムスリップして、由比正雪と後水尾法皇、紀州大納言頼宣の野望を阻止しようとする。瓜二つの双子のような三厳と満厳は閉じている隻眼が左右で異なる(三厳・左目、満厳・右目)。冒頭の「山城国大河原」で絶命していたのは満厳だった。

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柳生十兵衛死す 上 山田風太郎傑作選 室町篇

柳生十兵衛死す 上 山田風太郎傑作選 室町篇

  • 著者:山田 風太郎
  • 出版社:河出書房新社
  • 発売日: 2020/08/05
  • メディア:文庫(河出文庫)
  • 目次:山城国大河原 / 慶安の柳生十兵衛 / 剣と能 / 舎人金春七郎 / 秘曲 ”世阿弥” / 相国寺の八卦見 / この師この弟子 / 法皇さまの葱花輦 / 帝なりし女人 / 対決 / 天に沖す七重塔 / 室町の柳生十兵衛 / 世阿弥と一休 / 魑魅魍魎の金閣寺 / 太平記を詠む幻術師 / 故山の剣侠 / 山城柳生いろり咄 / 呼ぶ声 / 朝は山中暮には市中 / 後南朝党/ 神器盗り/ 陰流恍惚剣 ... / 母鳥子鳥 / 魔天にかける罠 / 風蕭々


柳生十兵衛死す 下 山田風太郎傑作選 室町篇

柳生十兵衛死す 下 山田風太郎傑作選 室町篇

  • 著者:山田 風太郎
  • 出版社:河出書房新社
  • 発売日:2020/08/06
  • メディア:文庫(河出文庫)
  • 目次:薪能 / 大塔燃ゆ / 室町へ翔ぶ夢幻能 / 慶安へ翔ぶ夢幻能 / 兵どもが夢の跡 / 獅子身中の獅子 / ある地誌的怪異 / 仙洞御所の果たし状 / 必殺御前試合 / 一休平家琵琶 / 金閣寺行幸の事 / 廃墟の魔童子 / 火定・水定/ 誰が十兵衛を斃すのか / 恋する女帝 / 剣の果て / 大秘事 / 日本国王源道義 / 大逆いずれぞ / 天地玄黄 / 編者解説・日下 三蔵

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