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ドッペル・バビロン [books]

『双頭のバビロン』(東京創元社 2012)は結合双子児の数奇な物語。19世紀末のウィーン、分離手術を施されたゲオルグとユリアンは別々の人生を歩む。伯父の養子となったゲオルグ・フォン・グリースバッハは新大陸のハリウッドで高名な映画監督に、ユリアンはボヘミアの〈芸術家の家〉(癲狂院)で隠遁生活を余儀なくされる。心身ともに離れ離れになった2人は自動書記によって、互いの体験(記憶)を精神感応のように共有することがある。ユリアンはグリースバッハ邸の階段の手摺りを滑り降りる幼いゲオルグを、ゲオルグは〈芸術家の家〉の墓地で京劇の女形に扮装した少年ツヴェンゲルと剣劇に興じるユリアンを幻視する。映画『タイタニック』の船中大宴会シーンの撮影中に発生した火災の原因を撮影したフィルムの争奪を巡るクライマックスでも、ユリアンとエーゴン・リーヴェン(ツヴェンゲル)の殺傷事件を綴るゲオルグの自動書記が大きな意味を持つ。そして「ZWENGEL」と題する手記を書き綴るのだが、ゲオルグの想像をユリアンが最終章(JULIEN)で覆すのだ。

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双頭のバビロン

双頭のバビロン

  • 著者:皆川 博子
  • 出版社:東京創元社
  • 発売日:2012/04/21
  • メディア:単行本
  • 内容:爛熟と頽廃の世紀末ウィーン。オーストリア貴族の血を引く双子は、ある秘密のため、引き離されて育てられた。ゲオルクは名家の跡取りとなって陸軍学校へ行くが、決闘騒ぎを起こし放逐されたあげく、新大陸へ渡る。一方、存在を抹消されたその半身ユリアンは、ボヘミアの「芸術家の家」で謎の少年ツヴェンゲルと共に高度な教育を受けて育つ...

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