SSブログ

ハンス・ベルメール [books]

『死、欲望、人形』(国書刊行会 2021)はハンス・ベルメール(1902-1975)の評伝。全10章中8章をピーター・ウェブ、「ベルメールとシュルレアリスム」 「イマージュの解剖学」 の2章をロバート・ショートが執筆している。ベルメールは少女の人体をバラバラ殺人風に切断・結合した球体関節人形で知られるが、人形に人工着色した写真やエロティックなイメ ージを透視画風に重ねた繊細なドローイングやエッチングの作品の方が数多い。男根や女性器を露出させた少女の挑発的で赤裸々なポーズはアンドレ・ブルトンを鼻白まらせるものだ った。ベルメールの希求したのは窃視症的なポルノグラフィではなく、その向こうに隠されている未知なる領域への探求だった。スーザン・ソンタグが 「ポルノ的な想像力」(1974)で提言しているように、《われわれにいかなる感情を呼び覚まそうとも、エロティカは人間的な状態にまつわる確かな真実への接近を可能にする》のだ。カラー口絵36点(16頁)、図版303点、巻末の略年譜、索引、掲載図版リスト、参考文献なども豊富で充実している。

                    *


死、欲望、人形 評伝ハンス・ベルメール

死、欲望、人形 評伝ハンス・ベルメール

  • 著者:ピーター・ウェブ(Peter Webb)/ ロバート・ショート(Robert Short)/ 相馬 俊樹(訳)
  • 出版社:国書刊行会
  • 発売日:2021/08/22
  • メディア:単行本
  • 目次:ドイツ 1902-1933 / 人形 1933-1934 / ベルメールとシュルレアリスム 1933- 1938 / 人形の遊び 1934-1938 / パリ 1938-1939 / 南仏 1939-1945 / イマージュの解剖学 1939-1949 / 南仏 1945-1949 / パリ 1949-1955 / パリ 1955-1975

コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。